段差900mm。この数字を入れると、傾斜路の全長は12,300mmになります。
店舗や病院の意匠図を描いていると、入口の段差をどう解消するかで必ず手が止まります。バリアフリー法の建築物移動等円滑化基準は、床面積の合計が2,000㎡以上の特別特定建築物(施行令第9条)に適合を義務づけています。そしてこの基準は、確認申請で審査される建築基準関係規定です(法第14条第4項)。つまり、寸法を一つ読み違えると、申請の窓口で図面が止まります。
■ 傾斜路は「高さ」から全部決まる 施行令第19条第2項第四号は、移動等円滑化経路を構成する傾斜路について三つの数値を定めています。 ・幅は、階段に代わるものは120cm以上、階段に併設するものは90cm以上 ・勾配は12分の1を超えないこと。ただし高さ16cm以下のものは8分の1まで ・高さが75cmを超えるものは、高さ75cm以内ごとに踏幅150cm以上の踊場を設けること
この三つを順に当てはめると、段差の高さだけで傾斜路の平面寸法が決まります。私たちの無料ウェブ計算で実際に入れた三つの例を並べます。
例1 段差150mm:16cm以下なので勾配1/8。水平長さは1,200mm。踊場は不要です。 例2 段差900mm・階段に代わるもの:勾配1/12で水平長さ10,800mm。75cmを超えるので踊場が1か所、踏幅1,500mm。全長12,300mm、幅1,200mm。 例3 段差1,600mm・階段に併設:勾配1/12で水平長さ19,200mm。踊場は2か所で全長22,200mm。幅は900mmまで絞れます。
例2と例3を見比べると、段差が700mm増えただけで全長は9,900mm伸びます。敷地の奥行きが足りるかどうかは、この段階で決まってしまいます。
■ 車椅子使用者用駐車施設の数は、2025年6月から台数で決まる 改正後の施行令第18条は、駐車施設の数が200以下なら「総数×2/100(端数切上げ)」、200を超えるなら「総数×1/100(端数切上げ)+2」以上の車椅子使用者用駐車施設を求めています。幅は350cm以上です。 ・60台 → 2台 ・200台 → 4台 ・201台 → 5台 ・250台 → 5台 200台と201台の境目で1台増えます。この境目は、条文を読まずに「1台あれば足りる」と覚えていると必ず外れます。
■ エレベーターと出入口 移動等円滑化経路の出入口の幅は80cm以上、廊下等の幅は120cm以上で、50m以内ごとに車椅子の転回に支障がない場所が必要です。エレベーターは、籠と昇降路の出入口の幅80cm以上、籠の奥行き135cm以上、乗降ロビーは幅・奥行きとも150cm以上。床面積の合計2,000㎡以上の不特定多数が利用する建築物では、籠の幅140cm以上が加わります。
■ 敷地内の通路と便房も同じ条文に並んでいる 建物の外でも数値は変わりません。移動等円滑化経路を構成する敷地内の通路は幅120cm以上で、50m以内ごとに車椅子の転回に支障がない場所を設けます(令第19条第2項第七号)。敷地内の傾斜路も、段に代わるものは幅120cm以上、段に併設するものは90cm以上、勾配は12分の1以下(高さ16cm以下は8分の1以下)です。ただし踊場の規定は、高さ75cmを超え、かつ勾配が20分の1を超えるものに限られます。建物内の傾斜路と一字違うだけのこの条件を、同じだと思い込んで描くと、屋外の長いスロープで踊場を入れ忘れたり、逆に不要な踊場で通路を延ばしたりします。 便所については令第14条が、便所を設ける階ごとに、車椅子使用者用便房を1以上設けることを求めています。政令は便房の室寸法を数字で定めていません。私たちのブロックの2,000角は設計値で、注記にもそう書いてあります。
■ 条番号がずれている 2025年6月の政令改正で、駐車場は第18条、移動等円滑化経路は第19条になりました。古い資料や生成AIの答えには旧番号のものが残っています。図面の注記に旧番号を書くと、審査担当者に指摘される原因になります。
■ 2,000㎡未満の建物では 床面積の合計が2,000㎡に届かない特別特定建築物では、基準への適合は努力義務です(法第14条第5項)。ただし地方公共団体は条例で対象の規模を2,000㎡未満に引き下げたり、基準に事項を付け加えたりできます(法第14条第3項)。計画地の条例が規模を下げていれば、小さな店舗でも適合義務の側に入ります。無料計算で「努力義務」と出たときも、所管行政庁の条例を一度確かめてから描き始めてください。
■ 間違えると何を失うか 基準に適合しない建物には、所管行政庁が是正命令を出せます(法第15条)。命令に違反すると300万円以下の罰金です(法第59条)。確認申請の段階で見つかれば、罰金の前に図面の描き直しが来ます。傾斜路が延びれば駐車区画が減り、駐車区画が減れば必要な車椅子駐車の数も変わる。一か所の読み違いが、配置全体をやり直させます。
■ 毎回描き直している部品を、一度だけ正しく 意匠図のたびに、出入口800・廊下1200・傾斜路・踊場・EVかご・乗降ロビー・車椅子駐車3500を描き直していませんか。私たちはこれを12個のDXFブロックにしました。すべてmm実寸、AC1024(AutoCAD 2010形式)、レイヤーは建具・通路・傾斜路・昇降機・駐車・便房・注記の4つ。各ブロックの下に条文番号と寸法の注記が入っています。
政令が寸法を定めていない部分は、そう書いてあります。車椅子の転回場所1,500角、駐車区画の奥行5,000mm、車椅子使用者用便房の室寸法2,000角は設計値です。ここを法定の数字のように見せることはしません。
■ 12ブロックの中身 数えた中身をそのまま書きます。出入口 片開き戸W800、出入口 引き戸W800、廊下W1200、車椅子転回場所1500角、傾斜路W1200(1/12・H750・踊場1500)、階段併設の傾斜路W900、段差解消H160(1/8)、エレベーターかご1400×1350、乗降ロビー1500×1500、車椅子使用者用駐車施設W3500、敷地内の通路W1200、車椅子使用者用便房2000角。1つ目の片開き戸は無料で、残りの11個が一式に入ります。どのブロックも原点を挿入基点にしているので、AutoCADではINSERTで、Revitではロードしたファミリを配置するだけで位置が決まります。
■ Revitでの使い方 Revit のファミリ(.rfa)は公開仕様のない形式なので、DXFで渡します。 1) 新規ファミリ(一般モデル)を作る 2) 挿入 ▸ CAD 読込でDXFを選ぶ 3) 読込単位をmmにする 4) 保存して「プロジェクトにロード」 パラメータや数式は移りません。これはパラメトリックファミリではなく、寸法の正しいブロックです。そのかわり同じファイルが AutoCAD でも SketchUp Pro でも開きます。
■ まず無料で 段差の高さ、駐車台数、床面積を入れるだけで、上の答えは画面に出ます。登録は要りません。出入口 片開き戸 W800 のブロックも無料です。自分の計画の答えを先に見てから、残りの11ブロックが要るかどうかを決めてください。条例で基準が付加される地域(法第14条第3項)では、所管行政庁の数値を必ず確認してください。